主人の居る館(終末)
それは、夢だった。
現実とは思えないくらいに幸せで、
とても暖かな、夢。
その夢は、生きてる証拠なんてどこにも無かった俺に、
ちゃんと、生きているんだという事を教えてくれた。
でも、そんな夢も、もう終わる。
覚めない夢は無い。
それが悪夢であろうと、
例え幸せな夢であろうと、
夢は、夢として思わなければいけないのだから。
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夢が、覚めていった。
悲しい夢を見ていた。
ただ、堕ちていくだけの夢。
少しだけ希望を見せられ、
それを絶望に変えられて、
余計深みに落とされる、そんな悪夢。
心が、壊れそうだった。
何かが救われた気がする。
目が覚めると、そこには2人の少女が居た。
一人はエリア。
もう一人は・・姫里か・・・
「やあエリア、おはよう。」
おはようございます。
そう言われた気がした。
「もう・・斎田さんっ、私には挨拶もなしですかっ!」
相変わらず、頬をぷくーっと膨らませて怒る。
それがおかしくて、笑ってしまう。
そして、益々姫里が怒って・・・
そんな、いつまでも終わらないような延々の幸福に満ちていた。
「寒いですね〜」
「全くだ。」
時はまた、流れた。
狩猟の時期は終わり、寒い冬。
何気なく散歩していた。
「全く・・あの時はどうなっちゃうのかと思いましたよ。
斎田さん、今にも死にそうな顔して――」
気の弱かった所を言われ、苦笑していた。
「・・・思えば、お前位かもしれないな。」
「え?何がですか?」
『素直に物を言える奴は、な・・・・』
「へぇ・・・そうなんですか?
捻くれてメイドを困らせてる主人が言う台詞とは思えませんね〜」
―――全く、こいつは・・・
「あ?それは誰の事だ?」
「やぁですね〜、斎田さんに決ってるじゃないですか〜(はぁと)」
―――何時までたっても、進歩が・・・無い・・・
「・・・嬉しいです。」
「ん?」
―――でも・・・
「嬉しいって言ったんですよ。今までで一番の労いですね。」
「・・・・そうか。」
―――願わくば、このまま進歩も何も無く・・・
「うふふ・・・これからも、頑張りますからね〜、覚悟してください♪」
「ああ・・お手柔らかにな。」
―――この『幸せ』が、続いていけたら―――
(終)
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