Nonak〜〜名雪の場合〜
雪が降っていた。
灰色に曇った低い空から、はらはらと白く、舞いながら落ちてくる。
冬、もう真冬。
そんな時なのに私は熱かった。
どんなだろうと気になって仕方なかった。
変わってなければ良いな、なんて思いながら、待ち合わせの場所へと急ぐ−−−
「ただいま〜」
「−−−はい、そうですか。わかりました。それでは・・はい。その日なら−−−」
家に帰ると、お母さんは電話の最中だった。
「それでは・・あら名雪、帰ってたのね。おかえりなさい。」
「うん、ただいま。」
お母さんは心持嬉しそうに、だけどいつもと変わらない笑顔を向ける。
「名雪、二階に空いている部屋があるでしょ?あそこを今から掃除しようと思うんだけど・・」
「え?う、うん。手伝うよ。」
釈然としないけれど、私も手伝うことにした。
「ねぇ、お母さん、掃除したのは良いけど、どうして今ごろ?」
模様替えにしては、ちょっと季節外れ。
気になって仕方なかった。
「そうね・・ちゃんとあなたにも話しておかないといけないわね。」
「?」
「えぇ!?ゆ、祐一が・・来るの?」
お母さんの話は思った以上にとんでもない内容だった。
「ええ・・・事後承諾になってしまうけれど、良いわよね?」
「わ、私は別に良いけど・・でも、なんで祐一が・・」
「だから、さっきも言ったでしょう?伯父さん達が転勤で居なくなの。
それを期に家を新築するんですって。だから、それまでの間−−−−」
どうにも考えられなくなって、そのままぼーっとしていた。
気がつくと朝になっていて、それから急いで学校に行っていた。
学校でぼーっとしているのを、親友の香里にからかわれて、
それから、つい従兄姉の祐一の事も話してしまった。
そして、今私は思いっきり走っている。
(居た−−−)
気がつくと止まっていた。
遠目からでも分かる。
よかった。変わってない。
そんな風に思いながら、
でも私はどうしようか迷った。
−−−何時間も遅れた。
単純に怒ってるかも知れない。
−−−数年間も会ってなかった
忘れられてるかもしれない
怖かった。
祐一が寒そうに手をこする。
それを目にして、はっと我に帰る。
少しはなれた所に自販売機があったのを思い出した。
すぐに走っていって、缶ジュースを一本、買ってくる。
そして、今度は走らず、ゆっくりと前に歩いて、一言−−−
『雪、積もってるよ』
『父の仇ぃっ!!』
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